すり傷

主に転倒するなどして、顔や手足といった部位の皮膚を擦ってしまうことで、表皮が剥がれてしまっている状態がすり傷です。傷そのものは浅いケースがほとんどですが、神経は皮膚の表面を走っているので、ヒリヒリした痛みの症状がみられるようになります。なお傷が深くなくても、傷口に砂などの異物が入り込んでしまうと化膿しやすくなるほか、傷跡が残ってしまうということもあります。

治療について

治療をする場合、異物があれば治療の前に取り除き、傷口を洗浄します。そして、ドレッシング材で傷を密閉していきます。創部の状態により、従来のように消毒して傷口を乾燥させる方法や、創部を適度に湿った状態(湿潤療法)に保たせて治癒を促進させる方法をとるときもあります。

切り傷

刃物やガラスといった鋭利な器物などに皮膚が接触するなどして、傷口が鋭く切断されている状態が切り傷です。この場合、周辺組織につぶれはみられませんが、損傷した組織の深さや幅によって治療内容などは異なります。そのため、切り傷が、神経、腱、骨といった組織にまで達していることもあります。

治療について

多量の出血がある、血管、神経、腱に傷がみられ、完全に断裂しているという場合は、縫合による処置が行われます。またサビや土が傷口に入っているのであれば、破傷風菌に感染してしまうことも可能性としてはあるので、予防対策として抗菌薬も使用していきます。

ちなみに出血の全てが縫合(傷口を糸で縫う)による処置とは限りません。傷口を塞ぐということであれば、創傷閉鎖用テープ、医療用ホチキスを使用することもあります。

巻き爪

主に足の爪(とくに親指)両側が内側に巻かれた状態になることを巻き爪と言います。この巻き爪が皮膚に食い込むなどして傷ついてしまっている状態になると陥入爪と診断されます。原因としては、サイズや幅の合わない靴を履く、開帳足、外反母趾、爪白癬(足の爪の水虫)、深爪といったことが挙げられます。

治療について

原因が特定していれば、足のサイズに合った靴を履く、爪白癬を治療するなどの対策をしていきます。また巻き爪の治療には、保険診療と自費診療(全額自己負担)があります。前者の場合、巻き爪を引き起こす両側の爪を切る、それだけでは効果が乏しければ、フェノールという薬品を用いて(巻き爪の原因)両側の爪を生えてこないようにする治療を行っていきます(フェノール法)。また、患部が感染しているという場合は抗菌薬の内服やステロイドの外用薬を使用することもあります。

脂肪腫

脂肪組織の増殖によって発生する良性の腫瘍が脂肪腫です。主に皮膚と筋肉の間、筋肉内の脂肪から現れるとされ、皮下でみられる腫瘍の中では頻度が高いと言われています。40~50代の女性に多いとされ、肩、背中、臀部で好発しやすく、痛みなどの症状が現れることはありません。また単発なこともあれば多発することもあり、サイズも1~10cmと様々です。

治療について

脂肪腫は良性腫瘍なので必ずしも切除する必要はありません。例えば、脂肪種が小さくて、患者様がそれほど気にならないのであれば経過観察になることもあります。脂肪腫を切除する場合は、患者様が見た目を気にしている場合です。対象となる脂肪種のサイズがそれほど大きくなければ、局所麻酔下での摘出となります。

石灰化上皮腫

良性の皮下腫瘍ですが、石灰のように一部の皮膚が硬くなっている状態が石灰化上皮腫です。現時点で原因が特定されているわけではありませんが、毛母細胞由来の腫瘍ではないかと考えられています。同疾患は、幼児や小児の顔面や首の周囲、上肢(肩~指)で発生しやすく、皮下に硬いしこりを感じます。自覚症状はみられませんが、軽い圧痛がみられることもあります。このほか、細菌感染を起こすと赤く腫れ上がることもあります。

治療について

外科的治療による摘出となります。その大半は、局所麻酔下で行われるので、外来での対応となります。ただし、腫瘍が大きい、幼い患者様であれば、全身麻酔下での摘出ということになります。

粉瘤

正式には表皮膿腫と言いますが、一般的には粉瘤あるいはアテローマと呼ばれます。これは皮下にできる袋状の構造物(嚢腫)に皮膚から剥がれ落ちた角質や皮脂といった老廃物が溜まるなどしてできたコブ状のものです。皮膚のどこにでも発生する可能性はありますが、とくに顔や首、背中、耳の後ろ、腰殿部に発生しやすく、半球状に隆起した直径1~2cm程度、真ん中に黒点がある腫瘍となっています。また単発の場合もあれば、多発することもありますし、サイズも10cm程度まで大きくなることもあります。このほか、痛みやかゆみといった自覚症状は基本的にみられませんが、感染(ブドウ球菌 など)や炎症を起こすと化膿するなどして、粉瘤に腫れや痛みがみられるようになります。これを炎症性粉瘤(炎症性表皮膿腫)と言います。

治療について

炎症性粉瘤が起きている場合は、抗菌薬の内服、あるいは腫れなどがひどければ皮膚を切開して膿を排出していきます。これによって粉瘤は小さくなっていき、腫れや痛みも治まるようになります。なお粉瘤そのものは良性腫瘍なので、放置のままでも問題ありませんが、同じ部位が何回も化膿してしまう、粉瘤が大きくなってしまったという場合は、構造物(嚢腫)そのものを取り除く外科的治療を行います。この場合、よほど大きいものでなければ、局所麻酔下で外来での切除が可能です。